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  • 特別企画 新田恵利の介護事業所訪問 第2回

通所介護(デイサービス)とは、食事や入浴などの日常生活における介護や機能訓練等、施設にて日帰りで提供される介護サービスのこと。他の利用者と接することで高齢者の孤立を防ぐとともに、自立を目指した様々なプログラムで生きがいづくりを支援し、介護をする家族の負担を大きく軽減しています。今回訪れた「みのりの庭」は、園芸活動をプログラムの主軸に据えたデイホーム。コンセプトは、「みどりと関わりながら、元気を目指す」。都心とは思えぬ沢山の木々や花等の植物に囲まれた介護施設には、どんな日常があるのでしょうか。管理者である丸山さんにお話を伺いました。

五感で季節を楽しみながら。利用者を繋ぐコミュニケーションツールとしての“緑”

新田さん: こちらのデイホームが動き出して1年ということですけれども、特徴はやはり「緑」ですかね。

丸山さん: そうですね。植物と関わり、季節を感じることを大切にしています。デイホームにいらっしゃる方は、初めはお互い知らない人同士ですけれど、共通の何かがあるとコミュニケーションのきっかけになります。そのひとつが「緑」なのです。ADL※2に合わせて園芸作業に関わっていただき、植物から日々元気をもらっています。

※2…Activities of Daily Livingの略。寝起きや移動、食事、入浴、着脱衣、排せつ等日常生活のための基本動作のこと。高齢者や障がい者の方が自立的な生活を送ることができるかをはかる指標のひとつ。

新田さん: 私は母が2年前に寝たきりになり、在宅介護をしているんです。要介護4から介護生活が始まって、ベッドから起き上がれなくなり、小さい庭しか眺められなくなりました。そこで、ベッドから見える場所に朝顔を植えてみました。それまでの母は、特にお花が好きという人ではありませんでしたが、すごく喜んでくれて!「あ、植物に興味を持つようになったんだなぁ」と。

丸山さん: まじまじと眺めると、お花への興味は変わります。私たちは毎朝、その日に採ったお花を皆さんに活けていただいています。切り花を買って、枯れたらまた買ってくる、ということはしません。皆さんと種や苗から育てて、また種を取って、やがて土も弱りますから肥料を足して再生させて…命のリサイクル、循環という考えでやっております。

新田さん: 土と共に季節を感じるということですね。育っていくのを見ると、また愛おしさが全然違いますよね。

丸山さん: はい。多くの失敗がありますけれど。無農薬ですので、葉も実も本当によく虫や鳥が食べてしまいます(笑) この辺りには、ハクビシンもいるんですよ。お米もやっと黄金色になったと思ったら、ある朝ほとんどの稲穂が食べられていて。なかなか思うようにはいきません。でも皆さんと育てる過程を楽しんでいます。

新田さん: 上空から収穫時期がちゃんとわかるんでしょうね (笑)こちらでは、ただ植物を育てているのではなく、創作・クラフトの材料にしたり、食べたりもされているんですよね?

丸山さん: はい。押花やドライにして作品づくりをしており、先程ご覧いただいた絵手紙の材料にもなっています。利用者さんたちが気楽にクラフトを楽しめるように、「あなたのそれがいい!」と、先生が個性を引き出してくださいます。新しいことに出会う楽しみは年齢に関わらずありますし、今まで培われたものを植物というツールを通して解放していただきたいです。それから、食べるということでいうと、パセリも春菊もみんなケーキやお団子にしちゃいますよ。

新田さん: パセリのケーキ!おしゃれですね!では普段のお食事はどうしていらっしゃいますか?

丸山さん: この施設のために特別にダシの味だけで作っていただいています。でも昨日は皆さんと昼食を作りました。

新田さん: あら!何を作られたんですか?

丸山さん: 利用者さんに名人がいらっしゃるので、おはぎを。さらに、けんちん汁、卵焼き、ほうれん草ときのこのソテー。昨日採れたゴーヤはサラダにしました。多くの方々はご自宅では包丁や火を使うことをご家族から止められている場合が多いので、「久し振り!」と言いながらやってらして。

新田さん: どうしても握力は弱りますし、きちんと掴めなかったりすると、家族としては包丁持たせるのは心配になりますよね。

丸山さん: 日頃から包丁も火も使っておやつはよく作るのですが、ごはん作りは量が多いので、少し心配でした。とはいえ、かつては皆さんがなさっていたことですから、それを思い出していただきながら一緒にワイワイ作り、スタッフも皆でご馳走になりました。「大変、大変」って仰っていましたが、帰宅される時には全員が「また是非やりたい」と。これからも、ご希望のメニューでチャレンジしたいです。

新田さん: 家では「夕飯は私が作るから!」と言ってしまって、きっと優しい目で見守れない(笑)こちらなら、きちんと見ていただけるから安心ですね。

植物の持つ力。緑豊かな環境で、ゆったりと時間を過ごすことで訪れる変化

丸山さん: デイサービスのニーズって、体操をしたいとか、自分の趣味の時間を持ちたいとか、そういう部分にももちろんありますけれども、家族のレスパイト※2のためや、日中の安全確保と食事や排せつをきちんとするために利用されている方もいらっしゃいます。でも、最初は園芸を好きじゃないと仰って、「私はここで見ているから」と室内にいらした方でも、皆さんがやっているのを長い間見てらして、今年の春には土に手を入れて一緒にやってくださったんです。だんだん植物のことが好きになり、みんなで一緒に作業することを楽しまれるようになられました。

新田さん: それは嬉しいですよね!この1年を頑張って、他にもやってよかったなとお感じのことがあったら、聞かせてください。

丸山さん: 認知症で落ち着かれない方が、だんだんと落ち着きを取り戻していくことですね。気持ちのよい環境や、他の利用者さんの理解や関わり方等、決してひとつの要素によるものではありませんが、こちらのデイホームにいらしていただくことで、ご本人が心の平穏をとり戻される。そして、そのことでご家族の心が少し楽になられるなら、これは私たちにとって大きなやりがいですね。

※2…乳幼児や障害者、高齢者等の要介護者を在宅でケアしている家族の精神的疲労の回復や負担軽減のため、一時的にケアを代替すること。

この施設から、小さな関わりから、少しずつ。「多世代が生きている社会」を感じてもらうための場所へ

新田さん: この施設をこれからどのようにしていきたいですか?

丸山さん: 地域との関わりを深めたいですね。家族が倒れるまでは「介護」ってすごく遠い存在ですけれど、ある日突然と襲ってくるんです。

新田さん: 襲ってきました!

丸山さん: 私たちのデイホームに遊びに来てくださり、イベントに参加していただくことで、高齢者や障がい者の方々を身近に感じられるといいな、と思い地域活動をしています。

新田さん: こちらは、防災訓練でのAED講習やお花の勉強会、介護の講習会と地域に広く開放していると伺いました。『子ども食堂』という取り組みもそんな願いから?

丸山さん: はい、楽しく多世代交流をしましょう、という方針でやっています。この辺りは核家族が多いので、一緒に時間を過ごし、一緒に食事することで、頭で理解するのではなく、自然に感覚的に高齢者の歩くスピードや話すスピードに馴染んでもらえたら、その体験が積み重なって世代間の距離が近くなっていくと考えています。デイサービスは契約している利用者様に介護サービスを提供し、その中でいいケアをする。これはもちろんなのですが、それだけに留まらず、人と人が繋がる場として何か社会貢献できるものがあるのではないか、ということを、ここで働くようになってから考えるようになりました。

新田さん: たとえば子供達が高齢者を街や電車で見かけても、声を掛けていいものか、席を譲っていいものか迷ってしまうと思います。それは悪意ではなくて、どうしたらよいのかが分からないだけなのですよね。

丸山さん: はい。子供だけでなく、お仕事を辞められたり、配偶者を亡くされたりする等、家庭や社会に役割が少なくなったとお感じの方々にも是非いらしていただきたいです。こういう場所に関わることで誰かのために役に立つ、自分の力が生かせることを感じていただくことは、生活の張合いにもなります。ご利用者の皆様も外部の方との交流を楽しまれていますので、地域の色々な方々に関わっていただき、みんなで笑顔になれたら、と願っております。

新田さん: 今日はたくさん勉強させていただきました。ありがとうございました!

訪問を
終えて
事業所の皆さんが園芸で育てた葉で煎れたハーブティーがとても美味しかったです。介護施設の提供サービスや過ごし方は、施設ごとに様々な特色があると感じました。ご本人や家族が何を求めるのか、私たちは常に考えておくことが大切ですね。

新田 恵利(にった えり)

1985年「おニャン子クラブ」会員番号4番としてデビュー。 翌年1月「冬のオペラグラス」でソロデビューし、オリコン初登場1位となる。2年前、母が骨粗しょう症のため寝たきりになったことをきっかけに介護に直面。 現在、バラエティ番組やドラマ等に出演する傍ら、自らの母親の介護を通じて、“明るい介護”を提案している。千代田区地域福祉計画策定委員。介護に対する学びや気付き、素直な気持ちはブログでも発信中。


デイホーム
みのりの庭 世田谷

基本情報
法人名
株式会社 生・活・計・画
施設名
みのりの庭 世田谷
種別
通所介護サービス
住所
〒154-0023
東京都世田谷区若林3-35-14 1階
アクセス
東急世田谷線「若林」駅下車 徒歩2分
東急バス「若林駅前」下車 徒歩6分


サービス付き高齢者向け住宅を併設(2階、3階は居住空間)。代表者が建築家であり、自社設計の施設であるため、バリアフリーであることはもちろん、ガーデンは濡れても滑らない、排水性が高い、反射を和らげる等、利用者様が一緒に園芸活動をするための環境づくりが徹底されています。

朝顔とゴーヤのグリーンカーテンに包まれたガーデンテラス。自ら育てることで、ゴーヤが食べられなかった方も克服し、今年は全員で召し上がったとのこと。利用者様は1日に1回は外に出て、鳥の声を聴きながら外の空気を吸い、植物からエネルギーをもらっているそうです。

私もゴーヤを育てたことがありますが、八百屋で見るゴーヤは緑なのに、ある日見ると黄色やオレンジになっていて「なんだこれ!」でした。植物は自分で育ててみないとわからないことがたくさんあって、愛おしさを感じるようになりますよね。


車椅子の方が座って作業ができるよう園芸コンテナはキャスター付きの特注品。だから日陰での園芸が楽しめます。ピーマン、オクラ、しそ、菜花、風船カズラ、藍、水仙…等々。ガーデンテラスには、見頃のものから、ちょうど植えたばかりのものまで、植物でいっぱいです。
新宿の都庁から用賀の方まで眺望を楽しめる屋上のコミュニティテラス。大きなどんぐりの木が気持ちの良い日陰をつくるため、ひなたぼっこスペースにもなっています。

どんぐりの木には、沢山の鳥たちの巣があります。中には針金ハンガーで作られたものも。都会のカラスってこうするのですよね。この緑の木々がなければ、こんなに鳥は来てくれないですよね。


『子ども食堂』が催された際には、子供達がこのコミュニティテラスで、草笛やスイカ割り、花火を楽しんだそうです。床面がフラットなバリアフリー施設であるため、高齢者の方も集いやすい地域交流の場として、様々な行事等が開催されています。

株式会社 生・活・計・画 様の求人情報



現在介護テラスに掲載中の求人情報はございません

採用メッセージ

みのりの庭 世田谷
管理者 丸山さん

スタッフを選ぶ際に大切にしていることは、植物が好きなことと、高齢者の方を人生の先輩として自然な感情で尊敬していることです。人間性が豊かな方なら経験は問いません。

研修制度はもちろん、デイサービスでは常にスタッフが複数で活動していますので、他のスタッフを間近で見ながら、スキルをアップしていただけます。人間には相性もあると思いますが、スタッフは複数、利用者さんも複数ですので、その点も安心ですよ。 また訪問介護と比べると、関わる時間が長いので、一日の時間の経過の中で利用者さんの体調やご気分に合わせたケアができます。

時間が決まった日中のみの仕事ですので、家庭との両立がしやすいかと思います。プログラムを色々やりますので、外から来てくださった先生方に、我々も利用者さんと一緒に学ばせていただけますよ。